アイスクリームと雪景色
「成田さん!」

男湯の前に里村が立っていた。

先に風呂を上がり、美帆を待っていたようである。

「あ、ごめんなさい、里村くん。遅くなってしまって……」

「成田さん、大丈夫ですか?」

美帆に近づいてくると、心配そうに顔を覗き込んだ。どうやら、里村もルナと遭遇したようである。

「今、氷川ルナが風呂から出てきて……何もしてないって言ってたけど」

里村は青ざめている。本気で、心の底から美帆を心配しているのだ。

「だ、大丈夫よ。ちょっと、絡まれただけ」

「本当ですね」

「うん、平気」

安心させるために、美帆は微笑んでみせた。

里村はホッとして、額に浮かべた汗を拭った。

「よかったあ。俺、真面目に驚いて……だって、俺たちより早く着いてるなんて思わなかったですよ」

ということは、里村はルナがこのホテルに泊まると予測していたのだ。
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