アイスクリームと雪景色
「油断して、成田さんを一人にしてしまった。すみません」

「そんなこと。それに、女湯でのことだもの、仕方ないわよ」

油断したのは美帆である。用心が悪かったのだから、里村にすまないとさえ思う。

「どうも、氷川ルナは成田さんだけに執着していますね。俺は関係なく」

「ええ」

美帆は同意する。初め、ルナは里村に執着しているのだと思い込んだ。

だけど、里村に気があるなら美帆のいないところでアプローチすればいい。それをしないのは、目的が美帆だけということ。 

「とにかく、無事でよかったです。これからはもう、ずっと俺と一緒にいましょう。片時も離れないで」

里村は男らしく低い声で言うと、美帆の手をぎゅっと握りしめ、熱心に見つめてくる。守ろうとする心意気に美帆はあらためて感激し、見つめ返した。

風呂上りの団体客がじろじろ眺めて行くが気にしない。

「里村くん」

「だから、その、夜も護衛します。成田さんの部屋で」

「うん、ありが……」

私の、部屋――?

ぱっと手を離した。

「どっ、どさくさにまぎれて何を……こんな時に、ふざけないで!」

「ふざけてませんよ」
< 262 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop