アイスクリームと雪景色
宏道が高校三年の冬、大学受験のため上京した。

大叔父の家に泊めてもらった際、いつものようにその写真を見せてもらう。彼女の笑顔を見れば、受験も上手くいきそうな気がした。

「しかしお前、よほどこの子が気に入ったと見えるな」

「まあね」

かなり古ぼけてしまった写真を見るうち、宏道は閃いた。なぜ、今まで思いつかなかったのか。

「ねえ、叔父さん。この子に会った旅先って、どこ? ホテルの名前は?」

旅先は温泉地だったらしい。

土地とホテルの名前が分かったところで、女の子について明らかになるわけでもない。それでも、この雪景色には心惹かれる。

もちろん女の子には会えないが、行ってみたいと思った。

「んんー? 温泉地とホテルの名前ねえー」

大叔父は首をひねった。

「忘れるわけないよね。社長になったばかりの苦しい時期に、この子の笑顔に救われたんでしょ。大事な場所だよね」

「……さあ、どこだったかなあ」

忘れたふりをしている――と、宏道は直感した。
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