アイスクリームと雪景色
宴会は予定どおり午後9時にお開きとなった。飛騨牛すき焼きと会席の満腹コースは好評で、皆、よく食べて、飲んで、歌った。

第二グループのメンバーは、これから温泉に入り、その後、部屋でもう一杯やるらしい。普段は忙しくて飲みに行けない彼らは、ここぞとばかりに酒を楽しんでいる。

風呂でひっくり返らないかと心配だが、皆の満足そうな様子に、幹事の美帆と里村はホッと胸をなでおろした。


「里村くん、お疲れ様でした」

「成田さんも」

5階のエレベーターホールで、二人は向かい合った。

ホールの小窓から見える景色は暗く、客室の並ぶ廊下には誰もいない。

夜のホテル独特のムードが漂い、美帆は意識してしまう。これは社員旅行なのだと、懸命に自分に言い聞かせた。

「あの……成田さん」

「えっ?」

「いえ、その……なんていうか、すみませんでした」

里村は、ばつが悪そうに詫びた。
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