アイスクリームと雪景色
坂道を少しずつ上り、やがて見晴らしのいい場所に出た。先ほどまでいたセンターハウスの屋根が見下ろせる。

「成田さん」

「ん?」

里村は美帆を見つめると、繋いでいた手をそっと離し、ポケットから何かを取り出す。

「これ、もらってください」

「なに……あ」

差し出されたそれを見て、どきんとする。赤と緑のラッピングに、銀色のリボン。

雲間から太陽の光が射し、二人を照らす。

「受け取ってください」

「あ、ありがとう」

美帆の手は震えている。

里村は、ちゃんと覚えていた。初めてのボーナスで、美帆にプレゼントすると言ったことを。

「鞄の奥に大事に仕舞っておいたんです。食事のあと、二人きりになったら渡そうと思って」

さっき、電話をかけると言ってレストランを出て行ったのは、ロッカーに預けたバッグからこれを持ち出すためだった。

だから、あんなに興奮気味に息を弾ませ、赤くなっていたのだ。
< 323 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop