アイスクリームと雪景色
「雲が出てきたわ。風も強くなってる……」

山らしい天気の変わりようだ。みるみるうちに、太陽が隠れてしまった。

「うーん。様子を見ながら下りましょうか」

せっかくの眺めを雲に遮られて残念そうな里村だが、振り返った顔は明るい。

「これって、初デートですよね?」

「え? あ、うん」

『違う、社員旅行よ』と、昨日までの美帆なら否定しただろう。だが、今は違う。

「そうよね。二人で、楽しみましょう」

「はいッ!」

里村には適わない。でも、こうして心を揺さぶられ、振り回されるのも幸せなんだと、美帆は知っている。

ゴーグルを着けると、急な斜面に飛び込んだ。

もう、何も怖くなかった。
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