アイスクリームと雪景色
ルナは瞬きもせず美帆を睨みつける。

それは、怒りと憎しみの眼差しだ。美帆は動揺するとともに理不尽な思いに駆られる。

(なぜ、私が憎まれなくちゃいけないの? そもそも、私の恋人を奪ったのはこの子であり、私のほうこそ憎む立場なのに)

ルナのライバル心が理解できず、ずっと不思議だった。どう考えてもこんなふうに憎まれる筋合いはない。何かが完全にずれていて、おかしいのだ。

「何でもかんでも『私のもの』なんですね。図々しい女!」

「は……?」

ルナの発言に、美帆はぽかんとする。どういう意味か分からないが、聞き捨てならない言葉が引っかかった。

「図々しいですって?」

ルナは美帆の顔をビシリと指差した。

「そうですよ。強欲で、図々しくって、めっちゃムカつく!」

中高生のような言葉遣いだが、いつもの甘ったるい声音とは違っている。語気も強く、職場では決して見せることのない、これが素の彼女なのだ。

美帆は驚くが、その激しさに感情を刺激される。
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