アイスクリームと雪景色
これで武装は完璧だ。いよいよ作戦開始である。


月曜日の朝――

丁寧にヘアメイクを施し、慣れないロングブーツを履いた美帆は、意気込んで出勤した。プレゼンに臨むのと同じ心境である。

以前坂崎が雑談のなかで語った。

『宣伝用のwebページを更新して、僕の一日の仕事は終了。オフィスを出るのはたいてい午後7時頃かな』

彼も規則正しい生活をするタイプなのだ。親近感が湧いたのでよく覚えている。

美帆は午後7時ちょうどにオフィスを出ると、エレベーターホールへと急いだ。薄暗いホールには誰もいない。階数表示を見上げ、カゴが6階で止まるのを確かめてからボタンを押す。

どきどきしながらカゴの到着を待つ。

男を待ち伏せするなんて、いかにも嫌らしい行為だ。美帆は思うが、こだわってる場合ではない。

ブーツの踵を揃え背筋を伸ばすと、高いヒールが緊張と自信を与えてくれる。カゴが到着しても、ぐらつかなかった。

美帆のイブにかける意気込みに感じ入り、天が救いの手を差し伸べたのだろうか。エレベーターのドアが開いた瞬間、息を呑んだ。

中にいたのは坂崎小次郎。しかも一人きりである。
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