アイスクリームと雪景色
足元から、雪の塊がどさどさと落下する。崖といってもほとんど斜面だが、下までかなりの落差だった。

「ちょっと、やめなさい。危ないでしょ!」

「小次郎さんの部屋に、しかもベッドの隙間に、わざとらしくイヤリングを仕込んだんでしょ。この男は私のものよって、アピールしたくせに!」

「はあ?」

(イヤリング……小次郎さんの部屋?)

「まさか、あの、トパーズのこと?」

28の誕生日に、坂崎がプレゼントしてくれたトパーズのイヤリングだ。彼の部屋で片方を失くしてしまい、そのままになっていた。だけど、美帆と別れた後になって、掃除中に出てきたからと坂崎が返してきたのだ。

その時、ルナも傍にいた。きっと、彼女がけじめをつけさせたのだと思った。過去の女のどんな小さな痕跡も許さない独占欲と執念だ。

惨めな気持ちでトパーズを受け取る美帆に、勝ち誇っていたはず。

(あれ……?)

美帆は唐突に、その記憶が曖昧なことに気付く。

あの時、美帆は世界中から馬鹿にされているように感じた。辛くて、情けなくて、坂崎のこともルナのことも、まともに見ていられなかった。
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