アイスクリームと雪景色
(そう、確かに勝ち誇っていたはず……この子は)

美帆はハッとして、身体を震わせる。

ルナが唇を噛みしめ、泣いていた。 降りしきる雪ではなく、涙で頬を濡らしていた。

「氷川さん、どうして……」

悔しそうに歪めた顔が、あの日の彼女にぴたりと重なる。それは段々と鮮明に、確かな記憶となり蘇ってくる。

美帆は誤解していたのかもしれない。ルナの自信ありげな言動から、こちらを小ばかにしていると思い込んでいた。

イヤリングを美帆に返した坂崎。ルナからすればどうだろう。

いくら律義者でも、元カノに思い出のアクセサリーを届けるなど、現在の恋人である彼女からすれば、今さらどうして? と、疑問が湧くのではないか。

その憤りが転じて、『美帆が坂崎の部屋にイヤリングを仕込んでおいた』などという歪んだ解釈になった。

普通の発想じゃない。

だけど、美帆の推測はおそらく当たりだ。それを証明するように、ルナは涙まじりに苦痛を訴えた。それは美帆が初めて知る彼女の本音だった。
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