アイスクリームと雪景色
(そうだ……!)

胸ポケットからスマートフォンを取り出した。直接、坂崎と話せばいいのだ。仕事を休んでこんなとろこまでついて来るのは、問題にぶつかっていく行動力ではなく、単に逃避だ。

「何してるのよっ」

スマホを操作する美帆の手元を、ルナが訝しげに見る。

「電話してるの。氷川さんの話し合うべき相手は私ではなく、小次郎さんでしょ?」

「……やめてよっ!」

美帆はさっと腕を上げ、スマホを取り上げようとするルナを睨んだ。

「いい加減、大人になりなさい。小次郎さんだって、そう望んでる」

強い眼差しと口調に衝撃を受けたのか、ルナは言葉を失う。だが、その代わりものすごい形相をして、美帆に掴みかかった。

「きゃあっ」

結局怒りに火を点けてしまった美帆だが、こうなったらその勢いを借りて、とことん吐き出させればいいと思う。長い間、彼女が溜め込んでいたものを、坂崎小次郎に。

しかし美帆は、自分が置かれた状況を忘れていた。足元の木の根は滑りやすく、ルナに押されて身体のバランスが崩れる。

「あ、ちょっと待っ……」

「小次郎さんなんて気安く呼ばないで。だいたい、なんでいまだに繋がってるのよ。番号なんて、さっさと消すべきでしょ」

木の枝を掴もうとしたが、スマホを持つ反対の手にはネックレスが握られている。
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