アイスクリームと雪景色
大切なネックレスを離さなかったのは一瞬の判断。

逆にスマホを手放すが、もう遅かった。

「きゃあああーっ!」

崩れる雪とともに、美帆は崖下に落ちていった。

落差は何メートルか、分からない。

途中、突き出た部分にぶつかり、鞠のように弾んでから雪の上にどさりと放り出された。

気がつくと、帽子もゴーグルも飛ばして、大の字になっていた。

「い、痛い」

ぼんやりとした視界のなか、ルナが崖上から覗いている。

どんな表情なのかははっきりしないが、彼女が手にするのは美帆のスマホだと判別できた。

ルナはしばらくそこに留まっていたが、やがて消えた。

後に残ったのは、絶え間なく降り続く雪と、木立を切る風の音のみ。痛みにうめく美帆の手に、ネックレスがしっかりと握りしめられていた。
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