アイスクリームと雪景色
「上らなくちゃ」

腿まで積もった雪をかき分け、斜面に足をかけてみる。だが、1メートルも這い上がらないうちにズルズルと下がってしまう。

「駄目だわ。腰が痛くて力が入らない」

美帆は、手にしたネックレスをじっと見つめた。

――もしも氷川さんに遭遇したら、相手にしないでください

――無茶な滑りはナシです。さっきみたいなことがあったら、すぐに俺に知らせてください

里村に連絡しようにも、スマホは持ち去られてしまった。ルナは、里村や開発部のメンバーに報せないつもりかもしれない。

雪は止む気配がなく、風も強い。山は吹雪の様相を呈してきた。

ぞっとした美帆は、思わず声を張り上げる。

「誰かいませんかー!」
 
何度も何度も、必死で叫んだ。パトロール隊が近くを通らないだろうか。なんでもいい、とにかく助けてほしかった。

「誰かー!」

返事はなく、美帆の声は風に千切られていく。
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