アイスクリームと雪景色
「こっ、こんばんは」

「や……やあ」

何とか挨拶をする彼女に、彼もなぜかたどたどしく返した。そして、驚いたように目を丸くし、美帆の姿をぐるりと見回す。

美帆は戸惑うが、しっかり武装した甲斐があったのだと手応えを感じる。彼の頬が、ほんの少し赤らんだ気がした。

「偶然だね。君も今帰りなんだ」

いつもと同じ、落ち着いた口調で話しかけてくれた。美帆は嬉しくなるが、いざとなるとどう切り出せばいいのかわからない。恋愛に不慣れな女の悲しさだ。

さり気なくクリスマスの話題を振り、イブに予定があるのか聞き出せばいい。だが、さり気なくというのがどれほど難しいことか、美帆は思い知る。

プレゼンでも感じたことのないプレッシャーだった。

(もし彼に恋人がいたら、どうすればいい? それに、本心を見抜かれたら……)
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