アイスクリームと雪景色
――慌てないで、俺を呼んでください


(里村くん?)

幻聴だろうか。美帆は焦り、気を確かに保とうとする。

だけど里村の声なら、幻聴だっていい。しっかりと聞きたかった。


――下手に動いちゃ駄目ですよ


美帆は、今来た道を振り返った。雪を漕いだあとが、あっという間に、新たな雪に隠されていく。

(そうだ、私は里村くんに忠告されたんだ。それを守らなかったから、こんなことになった)

これ以上動き回ったらどうなる?

彼の言うとおり、間違いなく遭難するだろう。

美帆は震えつつもハッと閃く。里村は、一人で滑りたいというのを許してくれた。勘の良い彼のことだから、ネックレスを落として、それを拾いに行くと察したのかもしれない。

それなら、きっと探しに来てくれる。ネックレスを落とした付近に、美帆のスキー板とポールが立ててあるのだから目印になる。
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