アイスクリームと雪景色
「元の場所に戻ろう」

引き返そうとするが、腰が限界だった。負傷した上に、雪をかき分け歩くなど無茶だった。無茶するなと、あんなにも念を押されたのに。

美帆はだが、力を振り絞って歩こうとした。元の場所に戻り待っていれば、里村が必ず探しに来てくれる。

「ウウ……息が、く、苦しい」

向かい風が吹き付ける。

冬山の恐ろしさを、美帆は身をもって知った。ほんの短時間で気象が変わってしまう。穏やかに晴れていたかと思えば、狂ったように雪風を巻き起こす。

美帆は油断しきっていた。

ルナのことをどうこう言える立場ではない。坂崎の律義さに甘え、里村の優しさに甘えていた。これはきっと、傲慢に対する報いなのだ。

誰だって一生懸命生きているのに、自分ばかりが酷い目にあっていると被害者面して。
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