アイスクリームと雪景色
ルナは話し終えると、よろよろしながら椅子から立ち上がった。

「成田さん。これまでのこと、どんなに謝っても謝りきれないし、許してもらえないと思います。でも、私、こうするしかなくて……」

懸命に、姿勢をまっすぐに伸ばし、もう一度、坂崎とともに深く頭を下げた。

「本当に本当に、すみませんでした!」

「……氷川さん」

美帆は不思議な気分になる。本当に、彼女は氷川ルナだろうか。

(ううん、この女性(ひと)こそ氷川さんなんだ)

これまで、恐ろしい魔法にかけられていた。それがようやく解けて、もとの姿になったのだ。美帆は確信できた。


二人が部屋を出て行くと、入れ違いで里村が入ってきた。ベッド脇のパイプ椅子に腰かけて美帆の手を握り、熱っぽい目で見つめる。

彼の体温を感じながら、美帆は考える。ルナの本音に、彼はいつ気付いたのだろう。
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