アイスクリームと雪景色
美帆の実家は特に裕福ではない。というより、町全体が不景気だったらしく、周囲も似たような家庭が多かった。

しかも美帆の父親は時間にルーズで、会社にしょっちゅう遅刻していた。当然、出世などできず、給料も上がらない。母親は家計を助けるために隣町まで自転車を漕いでパートに出ていた。

今では年金をもらい、それなりの生活を送る両親だが、美帆と兄が大学生の頃は特に大変だったと母親がぼやいていた。

(そういえば、うちの家族はめったに外食しないし、旅行にも出かけなかった。遠い昔、家族揃って温泉旅行した記憶があるけど、一度きりかな)

贅沢したかったわけではないが、父親の遅刻癖は堕落の象徴であると理解した。

向上心は持ちたい。その最もわかりやすい実証はお金である。

『規則正しく、きちんとしたリズムで生活するのが大事だよ』

母親の教えを胸に、父親を反面教師に、美帆は生きている。
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