アイスクリームと雪景色
充実感が得られる仕事は美帆の生き甲斐だ。

しかし働くことは、そもそもお金を得るためである。そして、規則正しい生活リズムを守るためにも、これまでどおり会社勤めは必要だ。

坂崎と結婚したからといって、美帆が生き方を変えることはないだろう。

彼ならきっと、わかってくれる。自分達は似たもの同士であり、同じ未来へと続いているのだから。相性の良いパートナーとともに、今後も理想的な人生を歩んでいく。

美帆は希望にあふれていた。坂崎小次郎の信頼と愛情を疑いもせず。


その年も、坂崎はタワーホテルのレストランにクリスマスディナーの予約を入れた。予想どおりの誘いを、スケジュール帳に嬉々として書き込む美帆に、坂崎は例年とは別の言葉を添えた。

「その日、大事な話があるんだ。遅くなるかもしれないから部屋もとっておく」

いつになく真剣な眼差しに美帆はどきっとする。

美帆のアパートの前。デートの帰りに送ってくれた坂崎の車の中で、二人は見つめ合う。

「美帆……」

「あ、ごめんなさい、待って」

美帆のスマートフォンが鳴り、何か言おうとする坂崎を遮った。
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