アイスクリームと雪景色
クリスマスデートの当日、タクシーで迎えに来るはずの坂崎をアパートの部屋で待っていると、電話が鳴った。

坂崎からだ。約束の時間を5分回っている。

(いつも時間厳守の彼なのに……トラブルでもあったのかしら)

「小次郎さん、どうしたの?」

『すまない、美帆』

開口一番、謝った。彼らしくもない、うろたえた口調である。

「何かあったの?」

美帆は緊張し、スマートフォンを両手で支え直す。

おそらく仕事のトラブルだろう。彼の背後から、オフィスのざわめきが聞こえる。

『実は、僕の担当するウェブページを、氷川(ひかわ)さんが中身を確かめずに更新したんだ。新製品の未発表情報が、10分ほどだが公開されてしまってね、問い合わせの対応に追われてるところだ』

未発表情報の公開と聞いて美帆は驚く。念のため確かめると、現在開発中のアイスクリーム製品の情報は入っていないようで、少しホッとした。
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