アイスクリームと雪景色
「小次郎さん。大変だけど、気を落とさないでね」

『ああ、ありがとう。重大な情報というわけでもないが、ミスはミスだからね、真摯に対応しなければと思ってる』

坂崎はそれから、今夜の約束をキャンセルせざるを得ないことを、あらためて詫びた。美帆はディナーデートの時間を作るために仕事の段取りをつけ、すっかり準備を整えていただけに残念だったが、そういうことならば仕方がない。

「いいの、仕事のほうが大事だもの。気にしないで」

『……う、うん。まあ、そうなんだけど』

坂崎は歯切れ悪く言うと、なぜか押し黙った。

こちらに気を遣い、電話を切りにくいのかもしれないが、彼の沈黙はかえって美帆を急かす。

「小次郎さん、忙しいのにわざわざ電話してくれてありがとう。もう、仕事に戻って」

『美帆、僕は……』

深刻そうに何か言いかけるが、美帆は聞かない。本当にもう、気にしないでほしかった。イブは来年も訪れるのだから。
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