アイスクリームと雪景色
「頑張って! 仕事は生活の基本だもの、優先させなきゃ」

坂崎の負担にならないよう明るく言う。きびきびとした口調が彼に好まれると知っていた。甘えた口調は女性の媚びだと彼が軽蔑し、嫌っていることも。

『わかった……また連絡する』

数秒の間を置いて、電話は切れた。

落ち込んだ声に聞こえたが、部下のフォローに忙しいのだから無理もない。困った部下を持って坂崎も大変なのだ。

「さてと。お風呂に入って、もう寝ようっと」

クリスマスデートの中止は残念だけど、身体のためにはラッキーだと美帆は思う。連日の残業で疲れが蓄積していた。彼女にとって、願ってもない休息時間である。

ベッドに入って眠ろうとした美帆は、大事なことを忘れているような気がして目を開けるが、睡魔には勝てず、いつしか夢の中に落ちていった。
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