アイスクリームと雪景色
「お疲れ様でしたー、オッケーです!」

撮影が無事終わり、身体から力の抜けた美帆は、椅子の背にぐったりともたれた。

「大丈夫?」

坂崎が近寄り、さり気なく声をかけてくれた。

「う、うん。平気よ、この通り……あっ」

立ち上がったとたん、よろめいた。ずっと緊張していたので、脚が痺れたのだ。

「危ない!」

坂崎が支えてくれた。美帆を抱きかかえる格好になり、周囲から冷やかす声が上がる。開発部と広報部の社員は、二人の関係をよく知っていた。

美帆はさっきとは別の意味で赤面しそうになるが、坂崎がすぐに座らせてくれたので、なんとか冷静を保つことができた。

「ご、ごめんなさい」

「いや、こっちこそすまない。撮影が長引いたから疲れたんだな」

落ち着いた口調は、美帆の好きな大人の要素である。仕事モードの彼と触れ合い、久しぶりに胸がときめいた。

だが直後、そんなしっとりとした感情も一気に吹き飛ぶような、強烈な発言が美帆を襲った。

「ぺったんこの靴でよかったですねー。ハイヒールだったら絶対倒れてますよー!」
< 52 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop