アイスクリームと雪景色
「大事な話があると僕が言ったのを覚えてるか。あの夜、君にプロポーズするつもりでいたんだ。それなのに、君は仕事優先だと言い切り、快くキャンセルに応じた」

絶句する美帆に、彼は容赦せず畳み掛ける。堰を切ったような勢いだった。

「いつだって君は、合理的に生きることしか考えない。大事な話が何だったのか気にも留めず、仕事に戻れと言う。仕事のほうが大事だからと。食事が無理でも、僕はせめて君に会い、抱きたかった。部屋をとったのも忘れられて、すべて忘れられて、そんな相手を愛し続けるほど、僕は割り切った人間じゃない」

美帆はショックを受けた。ことの真相に、そして坂崎自身に対しても。この人が、こんなにも無軌道で感情的な人だったなんて。

「だって……だって、小次郎さん、何も言わなかったから」

「恋人なら、どんな鈍い奴でも気付くだろう。わからないのは、君が冷たいからだ」

「……冷たい?」

あ然とする美帆に、坂崎は深く頷く。

「そうだ。ルナは違う。彼女は僕のことを懸命に想い、愛してくれる。いつも傍にいて、気にかけてくれる」

「そんな……」

美帆は堪らなかった。どうして、別れの原因になったあの女を、この人は庇うのか。納得など、絶対にできない。
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