アイスクリームと雪景色
先に帰ったはずの里村くんが、なぜここにいるの?

美帆は目をぱちくりとさせる。

里村は腕一本で美帆を支えていた。体重をまるごと受け止めても、びくともせず。なんという安定感だろう。

「大丈夫ですか。怪我はないですか?」

「う、うん。ありがとう、大丈夫よ」
 
里村の髪が雪に濡れている。さっきからずっと、ここにいたのだろうか。そして、足を滑らせた私を、すっ飛んできて助けた――

美帆はまさかと思うが、日頃の里村の言動を考えれば、じゅうぶん有り得ることだ。

(通用口の外で、私を待っていたのね)

ほとんどストーカーである。だけど、困った行動なのに、涙が出るほどありがたかった。

「危なかったな。転ばなくて良かった」

横から差し出されたバッグと低い声にビクッとする。

「あ……坂崎さん」

いつの間にか、坂崎がそばに来ていた。里村に意識が集中し、彼の存在を忘れていたらしい。

美帆はそんな自分に驚きつつ、坂崎が拾ってくれたバッグを見つめた。
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