アイスクリームと雪景色
「どうも、ありがとうございます!」
里村が美帆の代わりにバッグを受け取った。片腕はしっかりと美帆を抱いたままである。
「さ、里村くん、ごめん。もう、平気だから」
自分で立とうとする美帆だが、なぜか里村は腕の力を緩めず離さない。というより、かえって力が加わった気がする。
「あ、あの、里村くん?」
坂崎が不思議そうに見ている。妙な空気が三人の間を流れるが……
「大丈夫ですか、成田さん。びっくりしましたよー、ここのタイルって、ツルツル滑って危ないですよねー」
割って入ったのは、氷川ルナ。いかにも心配そうな声は甘ったるく、芝居がかっていた。
しかも、美帆ではなく里村を上目遣いで窺い、反応を見ている。広報部のアイドルも、噂の新人君に興味があるらしい。
彼女のあからさまな態度に美帆は呆れた。
そして、里村も他の男性社員と同じく、可愛い彼女に愛想よくするのだろうと予測し、なぜか腹が立った。
しかし、里村はルナではなく坂崎を見ていた。
男二人は対峙して動かず、互いを観察している。ルナの存在に、まるで気付かないように。
里村が美帆の代わりにバッグを受け取った。片腕はしっかりと美帆を抱いたままである。
「さ、里村くん、ごめん。もう、平気だから」
自分で立とうとする美帆だが、なぜか里村は腕の力を緩めず離さない。というより、かえって力が加わった気がする。
「あ、あの、里村くん?」
坂崎が不思議そうに見ている。妙な空気が三人の間を流れるが……
「大丈夫ですか、成田さん。びっくりしましたよー、ここのタイルって、ツルツル滑って危ないですよねー」
割って入ったのは、氷川ルナ。いかにも心配そうな声は甘ったるく、芝居がかっていた。
しかも、美帆ではなく里村を上目遣いで窺い、反応を見ている。広報部のアイドルも、噂の新人君に興味があるらしい。
彼女のあからさまな態度に美帆は呆れた。
そして、里村も他の男性社員と同じく、可愛い彼女に愛想よくするのだろうと予測し、なぜか腹が立った。
しかし、里村はルナではなく坂崎を見ていた。
男二人は対峙して動かず、互いを観察している。ルナの存在に、まるで気付かないように。