アイスクリームと雪景色
「この店には、よく来るの?」
「はい。学生時代に何回か利用してます」
「そう」
ピンストライプのスーツがよく似合う、見目麗しい美青年。学生時代も、さぞやモテたことだろうと美帆は想像する。
陽気で小洒落たこのバルで、女の子とデートを重ねたのかもしれない。
「スペイン産ワインね。美味しそう」
「どのボトルにしますか」
前のめりになってワインリストを提示する里村に、美帆は首を振った。
「グラス一杯でいいわ。あとはノンアルコールで」
「成田先輩、アルコールは弱いですか?」
「強いほうだと思うけど、まだ月曜日だから」
「あー、ですよね」
里村はお酒が好きなのか、あからさまにガッカリする。
しかし、我々は社会人だ。明日も出勤するという使命を忘れてはならないと美帆は考える。