アイスクリームと雪景色
ピンチから救ってくれたり、励ましてくれたことで、少しは見直したのに。

里村の言動は相変わらず予測不可能。何が飛び出すか分からない。やはり、一筋縄ではいかないのだ。

美帆は気を引きしめる。

とりあえずは、動揺を悟られないことだ。

「そんなことより、早く注文しましょう。遅くなるわよ」

「はいッ、先輩」

二人は額を寄せて、メニューに集中した。


運ばれてきた料理は、里村が言ったとおりの美味しさだった。

海老、イカ、牡蠣など新鮮な魚介類を鉄板で調理した香ばしいプランチャをお腹いっぱい食べた。人気メニューだというパエリアも大皿で注文した。

美帆は食事するうち、ここのところ控えめだった食欲が復活したことに気付く。料理が美味しいのはもちろんだが、目の前で若い男がどんどん皿を空けていくから、つい釣られてしまう。

(お酒がもっと欲しいわ)

分別をきかせてアルコールを控えた手前、ワインを追加するのは憚られる。仕方なく、グラスに残った液体をちびちびと飲んだ。
< 84 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop