アイスクリームと雪景色
「行きましょうっ!」

里村が叫び、勢いよく立ち上がった。

周囲の客が一斉に振り向き、美帆は注目を浴びる。

「な、なんなの……どうしたのよ?」

里村は素早くコートを羽織ると、テーブルの横に差し込まれた伝票を抜いて、レジへと向かった。

「え……?」

残された美帆は呆然とする。しばらく座ったままでいたが、隣席のカップルが痛々しそうにこちらを見ているのに気付くと、コートとバッグを引っ掴んで彼を追いかけた。

「里村くん、待って。ここは私が……」

「いいんです」

里村はカードで支払いを済ませたらしく、美帆が財布を開く間もなかった。

「でも」

「そんなことより、早く行きましょう」

構わずドアを開ける里村に肩を抱かれ、強引に店から連れ出された。

どう見ても怒った態度である。

いつもなら恭しくドアを開け、「さ、どうぞ成田先輩」とか言って美帆をお姫様のように扱う彼が、まるで犯人を連行するかのようだ。

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