アイスクリームと雪景色
外は相変わらず雪が降っている。

のろのろ運転の車が道路に列を作り、通行人は寒そうに身を竦ませ、足早に歩道を過ぎていく。街は、すっかり冬景色に変わっていた。

里村が差しかける傘の中、美帆は肩を抱かれて歩いていたが、駅に向かう道から逸れたところで、ブレーキをかける。

「里村くん、ちょっと待って!」

勝手に振舞う後輩を睨み上げた。

彼の独りよがりな行動は、先輩としても一人の女性としても許せるものではない。

「どこに行くつもりなの? 駅は反対方向なんだけど」

里村は返事をせず、やはり怒った表情で美帆を見下ろす。

肩を抱く手に力が加わり、しっかりと引き寄せられた。彼の胸元から甘い香りが立ちのぼり、美帆はなぜか鼓動が速くなるのを感じて、混乱する。

「怒ってるの?」

「……」

里村くんは、私のリアクションが気に入らないのだ。七歳も年上の“オバサン”に「惚れちゃったわ」なんて言われて、ドン引きしたのね――と、美帆は判断した。

それなら、どう返せばよかったのだろう。

美帆は考えかけるが、すぐに首を振る。

(たかが冗談で、そんなに怒ることないじゃない)
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