アイスクリームと雪景色
――抱かせてください
――今すぐ、俺のマンションに……
「ひゃああっ!」
裏返った声で悲鳴を上げ、一瞬怯んだ相手を全力で突き飛ばした。
傘が彼の手を離れ、距離が開いた二人の間に落ちる。驚いた通行人が遠巻きに見てくるが、美帆には取り繕う余裕もなく、目の前にいる不埒な男に対し、なけなしの理性を総動員するのが精一杯だった。
冗談に決まっている。いや、冗談だとしてもたちが悪い。どういうつもりか知らないが、今の美帆には許しがたい発言だった。
「なっ何を言ってるの、あなたは」
里村は傘を拾うと、雪を払ってから持ち手を差し出した。
企画会議で、箱崎はじめベテランの先輩社員を相手に持論を述べた時と同じ、真剣かつ堂々とした態度である。
これはジョークではない。
距離を保つべきだと判断した美帆は、警戒を解かず、傘を受け取ろうとしなかった。
しかし彼は手を引っ込めず、悪びれもせずに繰り返す。
「抱かせてくださいと、言ったんです!」
頭がくらくらする。情けなくて、涙が出そうだった。
――今すぐ、俺のマンションに……
「ひゃああっ!」
裏返った声で悲鳴を上げ、一瞬怯んだ相手を全力で突き飛ばした。
傘が彼の手を離れ、距離が開いた二人の間に落ちる。驚いた通行人が遠巻きに見てくるが、美帆には取り繕う余裕もなく、目の前にいる不埒な男に対し、なけなしの理性を総動員するのが精一杯だった。
冗談に決まっている。いや、冗談だとしてもたちが悪い。どういうつもりか知らないが、今の美帆には許しがたい発言だった。
「なっ何を言ってるの、あなたは」
里村は傘を拾うと、雪を払ってから持ち手を差し出した。
企画会議で、箱崎はじめベテランの先輩社員を相手に持論を述べた時と同じ、真剣かつ堂々とした態度である。
これはジョークではない。
距離を保つべきだと判断した美帆は、警戒を解かず、傘を受け取ろうとしなかった。
しかし彼は手を引っ込めず、悪びれもせずに繰り返す。
「抱かせてくださいと、言ったんです!」
頭がくらくらする。情けなくて、涙が出そうだった。