アイスクリームと雪景色
困惑を整理し、美帆がいくぶん落ち着きを取り戻した頃、二人は駅のコンコースまで来ていた。ダイヤが乱れているのか、改札前は込み合っている。

里村の熱視線を受けつつ、美帆はあることに気付いた。

お姫様扱いだなと、年輩の社員にからかわれるが、あれは的を射ていた。

里村はナイトのつもりだ。

だから、雪で転ばないよう美帆を助け、坂崎とライバルみたいに対峙したのだ。

「ありがとう、里村くん」

自然にこぼれた言葉とともに微笑むと、途端にぱあーっと明るい顔になるので、慌てて言い直した。相手が里村だというのを忘れてはいけない。

「気持ちは嬉しいわ。でも、私はもう」

自分はもう、恋人と呼べる人とイブを過ごすことはないだろう――

「恋愛はしないの。お腹いっぱいになりすぎて、壊れちゃったから」

「あっ」

美帆が失恋したばかりなのを知っているだろう里村は、そこのところに思い至ったのか、逆に傷ついた表情になる。

悪い子じゃないから、早く目を覚ましてほしい。
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