強引上司に絆されました
強引に口説かれました
琴子さんがお座敷から離れると、不自然な沈黙が場を支配する。
何か、課長がめっちゃ見てる。
熱い眼差しを向けられて、私を射殺すつもりですか?ってくらい見つめられてる。
ほんのりお酒が入って、すんごく色っぽいんですけど。
「なあ、俺と付き合わないか?恋人が居ないなら、俺と恋をしてみるってどうだ?」
ひょっとして、私、口説かれてる・・・?
鬼と呼ばれる課長に、イケメンだけど俺様なのに、優しくて・・・そんなこの人に、こんな風に正面から見つめられて、落ちない女子はいないよね?
実際、言われた瞬間心臓がバクンと音を立てた。
そしてグラグラと、揺れている。
いつ以来だろう・・・口説かれてこんな風にドキドキしてるのは。
「・・・そろそろ、帰るか。駅まで送る」
先に立った課長に、急いでバッグを持つと続いた。
カウンター越しに、課長のお兄さんが居たので、慌てて
「ご馳走様です。とっても、美味しかったです」
と挨拶をした。
「吏が居なくても、またおいで」
優しく微笑んで、くれた。
お兄さんは、接客業だからか穏やかに話す。
「はい、是非!」
会計で課長が琴子さんに、お勘定してた。
「課長、お幾らですか?」
「バカヤロ、上司に恥かかせんな。黙って奢られとけ」
「まっ、吏君たら、カッコつけちゃって。穂花ちゃん、イイ女は奢られとくのよ。また来てね」
「行くぞ」
暖簾を潜り、お兄さんと琴子さんに会釈してお店を後にした。