【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
光一の視線、挙動、その他諸々から察するに、彼は美香たちを『受付に座る女その一、そのニ、その三……』としか認識していない。
ーーただひとりをのぞいては。

美香(あっ、まただ)
美香は視線を感じて、顔を上げた。さりげなく周囲を見渡すと、視線の主はすぐにわかった。
受付横のちょっとした待ち合いスペース。そこから、光一がこちらを見ているのだ。

だが、彼が見ているのは自分ではない。美香が光一の視線に気がつくとき、それはいつも華が隣にいるときだ。
彼は華を見つめているのだ。

美香の先輩である華はそんな視線には気がつきもせず、黙々と受付業務をこなしていた。

美香(華さん、そこらへんの小学生女子よりよっぽど鈍いからな〜。そんなわかりづらいアプローチじゃ、一生発展しないですよ)

美香は心のうちで、光一に語りかけた。
そもそも光一が華に向ける眼差しは恋い焦がれているといった風情のものではない。わけもわからず、ただ気になって仕方ない。そんな感じなのだ。

美香(百戦錬磨のモテ男っぽいけど、案外純情なのかな)

美香は視線を光一から華へと戻した。
そして小さくため息を落とす。

美香(憧れの男が明らかに自分に興味持ってんのに、なーんで気づかないかなぁ?私なら即行動で、一年以内には寿退社コースなのに)




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