【シナリオ版】釣った夫は腐ってました！～鈴ノ木夫妻の新婚事情～

華「よ、要するに、妻としては愛せないけど、ルームメイトとして仲良くしようって‥‥そういうこと？」
光一「そう、大正解。理解が早くて助かるよ」
彼は目を細めて、にっこりと笑った。その蕩けるような甘い微笑みが、逆に恐ろしい。
華「は、早くない。ちっとも理解できてないから！そんな素早く頭を切り替えられるほど器用じゃないし‥‥」

光一「ーーなら仕方ないな」
光一は小さくため息をつくと、私の背中に腕を回して、ぐいっと力強く引き寄せた。
華「きゃっ」
不意うちをくらった華は、そのまま光一の胸に顔を埋める形になった。ふわりと鼻を掠めるのは、光一の愛用するフレグランスの香り。ほろ苦くて、どこか官能的で‥‥以前はあまり光一らしくないと思っていたけれど、いまの彼にはぴったりだ。
光一は華の耳元に唇を寄せ、低くささやいた。思わず背筋がぞくりとするほど、その声音は色っぽい。

光一「ーー愛してるよ、華」
華「えっ‥‥」
愛を告げたばかりのその唇が華の唇を塞ぐ。永遠を誓ったあの時と、なにも変わらない甘い甘いキス。

華（この一週間は全部、悪い夢だったんだろうか。幸せすぎる私へ、神様がくれたちょっとしたスパイスだったとか？ ）
一瞬は本気でそう思った。けれど、悪魔が華の淡い期待をあっさりと打ち砕いていく。
光一「‥‥これでどう？いいよ、華が望むなら幸せな恋人ごっこを続けても」
勢いよく顔をあげた華の目に飛び込んできたのは、彼の冷めた瞳。

ーーパァン。

考えるより先に体が動いていた。誰かを叩いたのなんて、これが初めてだった。
華（叩く方の手も痛むって、よく聞くけど、本当だったんだ）
叩かれた頬に手を当てて、光一は少し顔をしかめた。

華「‥‥ば、馬鹿にしないでよ。私にだって、プライドくらいあるんだから」
怒りで、華の声が小刻みに震える。