【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~

華「はぁ。情けない。あなたなんかに頼らなくても生きていけますってかっこよく言えたらなぁ」
貯金があと一桁多くあって、手に職でもあって、もうちょい美人でスタイル抜群で、実家も裕福なセレブだったら‥‥。
華「ん?それ、もはや私じゃないじゃん」
現実逃避に気がついて、冷静なつっこみを入れてみたものの、進むべき道はさっぱり見えてこない。

だいたい光一もなにを考えているのかわからない。あんなに自分のことを嫌っているのなら、なんで結婚したんだろうか。彼なら他にいくらでも気にいる女の子が見つかったはずだ。

華「‥‥キスとか‥‥しないでよね」
小さく呟いたその言葉は、誰に聞いてもらえることもなく消えていく。

結婚式ぶりのキス、馬鹿にするためだけのキス。そんなものに不覚にもドキドキしてしまった自分がなんだか可哀想だ。今だって、あの瞳に見つめられれば、抗うどころか身動きすらできなくなってしまう。初めて見る素のままの笑顔を、ほんの一瞬だけ、可愛いなんて思ってしまったこと。彼はきっと気づいてもいないだろう。

結局華は、行動だけじゃなく心までも、光一に囚われているのかもしれない。もしかしたら、付き合っていた頃よりずっと深く。彼に乱されて、揺さぶられて、それでも逃げ出せないでいる。





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