【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
華(でもーーごめんね、美香ちゃん!その質問の答えはきっと、聞かない方がいい。だって、私はできれば知りたくなかった)

華「あっ、ごめん。私、調べ物があって!先に出るね〜」
不満気な美香を残して、華は更衣室を出て受付の席につく。

○本社ビルの受付。朝の出勤時間。

花園商事本社ビルのエントランスはすでに出社してくる社員で混み合っていた。
華は彼らに笑顔でおはようございますと挨拶をする。時折、顔見知りの社員が挨拶を返してくれるのが嬉しい。

男性はみんな紺かグレーのスーツ姿。けど、若手の社員は結構おしゃれな人もいる。女性はみんな華やかだ。眺めているだけで、最近のファッションの流行がわかるくらいに。

長身、やわらかそうなブラウンの髪、まっすぐに伸びた背筋。
華「あっ、違った。‥‥って、なにやってんだ、私」

流れていく人波の中で、無意識に誰かを探している自分に気がつき、華ははっとする。
習慣って恐ろしい。けど、仕方ないじゃない。もう何年も、いつもここから彼の姿を探していたのだから。ほんのすこし、姿を見れただけで、その日一日ご機嫌になれた。目が合ったかもって思うだけで、一週間は頑張れる気がした。

華(ーーそんなふうに憧れていたときが一番幸せだったのかもしれないな。永遠の片思いの方がよかったのかも……)

華「だめ、だめ。仕事中は考えない、考えない」
華は思わず、声に出してつぶやいていた。

松島「なにを考えないの?」
華「ん?」

独り言に返事が返ってきたことに驚いて、華は弾かれたように顔をあげる。
松島「おはよう、白川さん」
華「あっ、松島さん。おはようございます」
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