【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
にこやかに微笑んでいる彼、松島文也は光一の同期で、経理部の所属だ。
シルバーフレームの眼鏡の奥の理知的な瞳が、彼の誠実な人柄を物語っている。
華(決して派手ではないけれど、とても素敵な人だ。ーーと、信じたい)

光一という前例ができてしまったので、華はもう自分の人を見る目が信用できなくなっていた。

華(でも、松島さんは、松島さんだけは大丈夫‥‥なはず)
彼のことは光一と付き合いだす前から知っていた。経理部には毎月提出する資料があって、そこで顔見知りになったのだ。松島はどんなに忙しいときでも丁寧に対応してくれるので、彼が出てきてくれるとほっとする。
光一と付き合い出した後で、ふたりが同期で、かなり親しいと聞いたときには驚いたものだ。

松島「あぁ、ごめん。もう鈴ノ木さんなんだよね。なんか、あいつの顔が浮かんじゃって呼びづらいな」
そう言って、松島は苦笑する。
華「いえ、社内では白川のままなので。今まで通りで大丈夫ですよ」

このままだと、社内どころか、戸籍も白川に戻ってしまいそうだけど。
松島「そっか、助かった。じゃあ、これまで通り白川さんで!」
華「はい」
松島「今日は鈴ノ木と一緒に来たの?」
華は小さく首を横に振る。
華「忙しいみたいで、光一さんの方がずいぶん先に」
松島「そうなんだ。営業は花形だけど、その分激務だからなぁ。俺にはとても務まらないや」

松島の経理部だって決して暇ではないけれど、繁忙期が読めるぶん、光一のいる営業部よりは少しマシなのかもしれない。

松島「新婚早々ほったらかしかもしれないけど、愛想つかさないでやってな。鈴ノ木って、外では格好つけてるけど意外と雑なとこあるからなぁ」
『意外と雑‥‥どころじゃない!』と、思わず言ってしまいそうになったけれど、なんとか我慢した。
こんなに優しい松島に迷惑をかけるわけにはいかない。





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