【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
しばしの沈黙。華は上目遣いに光一の様子をうかがってみるものの、彼の表情に変化はない。
華(ーーあぁ、ベッドを買うまではってことかな!ゆっくり休めなくて仕事に支障がでたら困るもんね)
華「うん、わかった。ちょっと寂しい気もするけど‥‥‥新しいベッドが届くまでは隣の部屋を使うね。早く買いにいこうね!」
華(そういうこと‥‥だよね。大丈夫よね‥‥?)
一抹の不安を感じつつも、同居初日に波風をたてたくない思いもあって、華は自分自身にそう言い聞かせた。
次の瞬間、光一がにっこりと微笑んだ。
華(ーーあぁ、よかった。やっぱり私が深読みし過ぎただけだ)

ほっとひと安心したのも束の間、光一の口からとんでもない台詞が飛び出してきた。
光一「うーん。そうじゃなくて、寝室はずっと別々ってこと」
華「うん?」
彼の優しげな表情と冷たい台詞がチグハグすぎて、華には理解が追いつかない。
光一はふーと大きく息を吐くと、真顔になって華を見据えた。
今まで見たこともない、なんの感情も入っていない冷たい目をしていた。

華(あれ?光一さんてこんな顔だった? 全然知らない人みたいなんだけど‥‥)

光一「今日は疲れたし、明日にしようかと思ってたけど‥‥早い方がいいか。あのさ、俺、たしかに結婚はしたかったんだけど正直それだけなんだ。結婚生活には興味ないというか‥‥面倒くさい。だから、俺のことは夫というより同居人とでも思ってくれる?」
華「‥‥えっと‥‥なんの冗談?あ、光一さん実はお芝居が趣味とか?」
あははという華ひとりの虚しい笑い声が部屋に響く。
光一「冗談じゃないよ、本気。ほら、俗に言うアレ、仮面夫婦だっけ?そんな感じでよろしく」
そう言って、彼は極上の笑みを見せた。優しく、甘く、包容力があって‥‥華がずっと憧れていた笑顔だ。
そのはずなのに、今は悪魔の微笑みとしか思えない。
華(ーー人間の目なんて、いい加減なものなのねぇ)

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