【シナリオ版】釣った夫は腐ってました！～鈴ノ木夫妻の新婚事情～

光一「誰でもいいってわけじゃない」
華「自分で言うのも悲しいけど、私レベルの女なんて、道に歩けば当たるから大丈夫よ」
光一「俺は華と結婚生活を続けたいんだよ」

華（ど、どの口が言うのよ）
開いた口が塞がらないとはこういう状況をいうのだろう。

華「＿＿だったらっ、少しは本音で向き合ってよ！いくらかでもマシな夫婦になれるよう努力しようよ」
ついつい興奮して、華は声を荒らげる。でも、彼の言い分はあまりにも勝手だと思う。

華「自分の理想像だけ押し付けないでよ。私の意見も聞いて、妥協点を探すくらいしてくれてもいいじゃない。夫婦だけじゃなく、それって人間関係の基本でしょ」
光一はむっつりと黙ったままなので、華はなおも続ける。
華「美人でもないバカな女だから、言いなりになると思ってた？　それなら、離婚一択です。慰謝料も財産分与もいらないから」
華ははぁはぁと肩で息をする。冷静に話そうと思っていたのに、無理だった。
自他ともに認める穏やかな性格だと思っていたのに、光一の前だと感情的になることばかりだ。
涙がこぼれそうになるのを、天井を仰いで必死にこらえた。

光一「もしかして、泣いてる？」
落ち着き払った彼の声が恨めしくて、ますます腹が立つ。
華「泣いてたまるか！あなたのために流す涙なんて、一滴だって惜しいくらいよ」
華の怒涛の反撃が予想外だったのか、光一は呆気にとられたようにかたまっている。
光一「……は、ははっ」
少しの沈黙の後、光一は白い歯を見せて、こらえきれないというように笑い出した。
華「な、なんで笑うのよ」
光一「いや。……うん、やっぱり誰でもいいわけじゃないな。華がいいんだ。ーーいいよ。探してみようか、その妥協点ってやつ」

その台詞に、このごに及んでも、まだときめいてしまう自分が悲しい。
華はそれを悟られたくなくて、憎まれ口をたたく。

華「上から目線……おじさんぽいから直したほうがいいよ」