【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
光一「いま上映中の作品だと、華の好みはあれだろ? CMいっぱい流れてるミュージカルのやつ」
華「え? なんでわかるの?」
思わず言ってしまった。しまったと思って、慌てて口をおさえたけど遅かった。
光一は苦笑している。その表情は怒っているわけではなさそうだった。
光一「まだ短い付き合いだけど、華の趣味くらいは把握してるつもりだよ。ジャネット監督は好きじゃないだろ?」
華「うっ……嫌いってわけではないんだけど、淡々とした展開が多くて眠くなっちゃうというか、その……」
ごまかしても無駄と悟った華は、正直に答えた。
光一「だと思った。華が苦手なのはわかってたけど、それでも今日は俺に合わせてって頼んでみたんだよ」
華「うん」
光一「今までなら、最初から華の好みに合うやつを提案してた。けど、俺たちの今後のためにはそれじゃダメなんだろ?」
華「うん。……ごめんなさい。ありがとう」
彼は華のした提案に、誠実に取り組もうとしてくれているのだ。
小手先でごまかそうとしていた自分が恥ずかしくなる。それじゃ、表面しか見ていなかったお付き合い期間からなにも進歩しない。
映画や食の趣味が違ったって、別に問題はないはずだ。譲り合ったり、理解しようと努力したり、解決策はいくらでもある。
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