【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
ふたりがスピード結婚だったこともあって、華の両親と光一はまだ数えるほどしか会ったことがない。それも結納とか結婚式とかかしこまった場面だったため、華の両親はかなり頑張って猫かぶっていた。

光一「真面目そうなお父さんと穏やかなお母さんて印象だったけど、普段もそう?」 
華はあんぐりと口を開けて、かたまってしまった。
華「真面目!うちの父が?一番似合わない単語だぁ……」
光一「真面目そうに見えたけど?」
華「いやいや!思いつきで起業してみたり、思いつきで放浪の旅に出ちゃったり、とんでもない人なの。だいたい、私がエリートを捕まえたいと身の丈にあわない野望を持ったのもあの人のせいで」
父のような男とだけは結婚すまいと、固く誓ったのだから。
父親の悪行をあれこれ暴露する華を見ながら、光一は唇の端をあげて、くすりと笑った。

光一「楽しそうな家族じゃん。ちょっと羨ましいわ」
華「う、羨ましいっていうのは光一さんとこみたいな家族を言うんだよ。紳士的なお父様に、美人で優しいお母様、優秀なお兄さん!ファミリードラマに出てきそうな完璧さだよね」
まだ数回しか会ったことはないけれど、理想的すぎる家族だった。なにより、毛色の違いすぎる華のこともあたたかく受け入れてくれた。実は、嫌味を言われたり、いびられたりするんじゃないかと華は怯えていたのだけれど、まったくの杞憂だった。

光一「ドラマねぇ……ドロドロ不倫ものか、遺産相続調停ものってとこかね」
華「えっ?」
光一「あの二人、仮面夫婦」
華「あの二人って、どの二人よ?」
光一「うちの両親。どっちも外に恋人がいるよ。兄貴はまぁ善良で普通の人間だけど、俺の兄貴あの人だけじゃないしな」
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