【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
華「いや、たしかに否定はしないよ。お互いが納得してるなら、仮面夫婦もひとつの夫婦の形なのかなとは思う。けど、私は、やっぱり……光一さんに他に恋人とか、その人との間に子どもが……とか、考えるだけで悲しくなる」
華(光一さんに私以外の女性の影か。リアルに想像できてしまうのが、つらいところよね)
華のテンションはだだ下がりもいいところだ。

光一「ふぅん。夫に、じゃなくて、俺に?俺に他に女がいたら嫌なの?」
華「うん?」
その問いの意味がいまいちわからず、華は彼を見返す。
華「あっーー」
射抜くように華を見つめる光一の瞳はやけに熱っぽい。その瞬間、華は彼の言葉の意味に気がついてしまった。

初めて『仮面夫婦でいたい』って言われたとき、そんな冷たい夫婦関係なんて嫌だと華は思った。仲の良いあたたかい夫婦が理想だって。でも、あの時描いた夫のイメージは漠然としていて、まだ輪郭がなかった。顔にはもやがかかっているような、そんな感じだった。

華(だけど、いまは、夫と聞けば光一さんしか浮かばない。夫婦は、私と光一さんのことだ)

『仮面夫婦が嫌』なのではなくて、『光一さんと仮面夫婦を演じることが嫌』に、はっきりと変わっていた。

華(私は、光一さんと仲の良い、素敵な夫婦になりたいんだ)

自覚してしまうと、急に恥ずかしくなる。
華(だって、告白しているようなものじゃない?そもそも、こんな些細な言葉の選び方に気がつく光一さんて……やっぱり察しの良すぎる男はどうかと思う)
なんて、華は心の中で光一に八つ当たりを試みる。




< 76 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop