【シナリオ版】釣った夫は腐ってました！～鈴ノ木夫妻の新婚事情～

その察しの良すぎる男に、再度目を向けてみる。すると、光一は口元を緩めて、くしゃりと笑った。
子犬みたいな無邪気な笑顔。初めて見る表情だった。

華「……なんで、そんな嬉しそうな顔するの」
華（そんな顔されたら……期待しちゃうのに）
光一「あぁ、そっか。嬉しいのか、俺」
言われて初めて気がついたという顔で、彼はうなずく。

光一は急に体を起こしたかと思うと、華の肩を引き寄せた。あっという間に華の体は、彼の胸の中にすっぽりと包まれてしまう。
ドクドクと大きく波打つ鼓動が、彼に聞こえてしまいそう。だけど、鼓動を抑える方法なんて、知らない。制御不能なところは、華の恋心とおんなじだ。

光一が華の耳元に唇を寄せる。それだけでぞくりと背筋が震えたことに、彼は気づいているだろうか。

光一「独占欲とか、嫉妬とかさ、そういうのは面倒だしデメリットでしかないと思ってたんだ」
柔らかな低音がささやく。
光一「けど、そういう感情に惑わされるのも悪くないかもな。少なくとも、華が俺に独占欲を感じてるのは嬉しい」
光一は毒舌で、きついこともズバズバ言ってくる。
華（でも、知らなかった。こんな甘い台詞も、ためらわずに言ってくれるんだ……）

華「ま、待って。ここでストップ。私、必要以上に期待しちゃうから」
顔も指先までも、全身が発熱しているみたいに熱かった。熱にうかされているみたいで、だから、これはきっと夢なのかもしれない。

光一「していいんじゃない、期待」
華（あぁ、やっぱり夢だ。こんな甘い現実があるわけない）
光一「さっき、華の愛で歪んだ俺を変えてくれるって言ってたじゃん。教えてよ。俺に、華の愛ってやつ」