【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
それから数日は何事もなく日々が過ぎていった。
光一の態度に変わったところはなく、むしろいつもより優しいくらいだったが、
華のほうはさりげなく彼を遠ざけていた。

〇オフィス街。夕方

華は仕事を終え、会社を出た。まだ五月とはいえ、今日は真夏のように暑かった。夕方
になっても熱気が肌にまとわりつくようだった。
華の視線がチェーンのコーヒーショップをとらえる。

華(アイスコーヒーでも飲んで帰ろうかな)

〇カフェの店内。

華は外に面した一人客向けのカウンター席に腰をおろした。大きなガラス窓の向こうには
花園商事本社ビルも見える。このカフェは会社から一番近く、座席数も多いので、花園商事
社員の御用達だ。第二の社食なんて呼ばれていたりもする。
華はアイスコーヒーに口をつける。特別おいしいわけでもないが、チェーン店ならでは
の安心感のある味だった。

華(結局、その後はなんにもないな)
怪しい男もあれきりだし、不審な手紙もあの一度きりだ。
華(怪しい男はただの勘違い、あの手紙は単なる悪戯ってことかな)
手紙は愉快犯みたいなもので、手当たり次第にばらまいている可能性もあるかもしれない。

華(ご近所で同じような事件がおきてないか警察に聞いてみようか。案外、犯人がつかまって
たりして)

そんな風に考えると、少し気持ちが軽くなった。



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