【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
松島「白川さんっ」
後ろから急に声をかけられ、華は振り返った。
華「わ、松島さん。偶然ですね~」
営業職の光一と違い、松島は基本的に内勤だから会社の外で顔を合わせるのは
珍しいことだった。
松島「うん。珍しく外で打ち合わせがあったんだ。また社に戻らなきゃいけないんだけど、
あんまり蒸し暑いからちょっと一服と思って」
華「わかります。私も暑さにやられて、ふらふらと」
松島「ひとりなら、隣いい?」
華がうなずくと、松島は隣の席に座った。

〇カフェの外
光一は人と待ち合わせをしていた。待ち合わせ場所には自分の会社近くのカフェを
指定していた。待ち人は遅刻の常習犯なので、中に入って待っていようかと入口に
向かいかけて、足をとめた。
楽しそうに話しこむ華と松島の姿が目に入ったからだ。

光一(別に……うちの社員ならだれでもよく行く店だしな)

ふたりは偶然会っただけのことだろう。華と松島を疑うつもりなどない。
なんなら、自分も入って声をかければいいのだ。頭ではそう思うものの、光一の
足は動かなかった。笑いあう二人の姿に、チリチリと胸の奥で燻るものを感じた。

待ち合わせ相手「--光一!」

珍しく、待ち人が時間通りに現れたようだ。
光一はなぜかほっと気分でふたりから視線をそらし、そちらへ
と足を向けた。

〇ふたたび、カフェ店内
他愛もない会社の噂話なんかを十分程度しただけで、松島はあわただしく会社に戻っていった。華はそれを見送ってから、自分も家路につくことにした。





< 84 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop