【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
それから、松島は黙って華のそばにいてくれた。
その気遣いを、華は嬉しく思った。
十分くらい経っただろうか。

松島「あ、来た。思ったより早かったな」
松島の声に、華は顔をあげる。視界の隅に公園にかけこんでくる男の姿をとらえた。
華「えっ?」
男の正体に気がついた華は、慌てて松島の顔を見る。
松島は軽く肩をすくめた。

松島「やっぱりさ、いまそばにいるべきなのは俺じゃないと思ってさ」
さきほどの電話の相手は光一だったのだろう。

光一がふたりの方へ近づいてくる。
光一「悪かったな、松島。迷惑かけた」
松島「いや、全然。仕事帰りに偶然白川さんを見かけて声かけたんだ」
光一は松島のその台詞に対し、少し不審げな顔をしたが言葉にはしなかった。
光一「ほんと助かったよ。ただ、この後はちょっと、華とふたりで話したいから」
笑顔を崩しはしないが、有無を言わせない雰囲気だった。
松島「あぁ、そうだよな。じゃあ俺は帰るわ。ふたりとも十分気をつけてな」
松島の姿が見えなくなってから、光一は華に向き合った。
< 89 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop