彼女を10日でオトします
「離してください。戸――」

 頭にのっていた顔が、いつの間にか、私の顔の横に位置していて……にっこり。

 目が笑ってないですよ、オニイサン。
 
 おもむろに細まる目が「いいの? はぐむぐ」を物語る。

 はっきり言ってホラー。テレビの中からはい出てくる、髪が長いお姉さんもびっくりのホラーだわ。
 
「キョン、最初から言ってごらん?」

 抑揚のない声で、ゆっくりとかみ砕くように囁く。

 夢の国の動く椅子が備わった、ハイテクマンションもびっくりのホラーよ。

「は、離してください……た、たすくさん」

 戸部たすくは、にまっ、と笑って、腕のロックを解除してくれた。

「よくできました。いいこ、いいこ」

と、私の頭をしきりに撫でる。

 ま、負けた……。

「ちゃんと手なずけてんじゃん」

「ううん、まだ調教中」

 放心状態の私の頭の上を許しがたい言葉が飛び交う。

 私は猛獣か!
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