彼女を10日でオトします
「こらこら、お前ら、あまり響ちゃんをからかうな」

 後ろから、またもやのほほんとした声。貴兄。

「響ちゃん!?」

 琴実さんと……おそらく、ヒデさんが勢いよくハモった。

 ああああ!!

「馬鹿! ちゃんと考えて名前を呼んでよ!
私と貴兄は、他人ってことになってるんだか――」

「たかにい!?」

 琴実さんとヒデさんのハモり再び。

 しまった! と思って口を押さえたけれど、時すでに遅し、のようで。

 視界の隅で、戸部たすくがお腹を抱えてうずくまっていた。

 野郎……笑いこらえてやがる。



「へえ、そういうことね」

 と、向かいに座るヒデさんが、コロッケパンを租借しながら頷く。

 はあ。

 保健室の中央、机同士をくっつける形で並べられたそこで尋問にあった、私と貴兄。

「つまりは、真田先生とキョンちゃんは、義理のキョウダイってわけだ」

 そう言って、斜向かいでカップラーメンをすする琴実さん。
 学校でカップラーメンを食べる子、初めて見たわ。

「隙アリ! から揚げもーらい」

「ちょっと!」

 隣から、手が伸びて私のお弁当から、から揚げを摘みあげる戸部たすく。
 私の制止も虚しく、安易に戸部たすくの口の中に消えた。

「ひょんなに食べひゃいなら、口移しひひゃれほうか?」

 ……何で『口移し』だけしっかり言えてるのよ。
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