彼女を10日でオトします
「はは、キョンちゃんおもしれぇな。琴実の言った通りだ」

 キョンちゃん!?

 ヒデさんはまったく訳のわからないことを言い放ったその口に、最後の一口を放り込む。
 
 それにしてもマズイわ。変な呼び名が蔓延しつつある。
 それもこれも、3個目のプリンの蓋と格闘しているコイツのせい。

 あ、歯であけた。もっと頑張りなさいよ。根性ないわね。

「こんな嫌そうな目して、たすくを見る女、俺、初めてみた」

と目を丸くするヒデさん。そんなこと言われたって、ねえ。

「仕方ないじゃない。嫌なんだもの」

「キョン……酷い……」

 カチャリと何かが机の上に落ちる音。音の方向は、隣で。戸部たすくの右手の真下に、プラスチックの透明スプーンが転がっていた。

「あはははは、ヒデヒデ、見てみ、このたすくの顔! ひぃ、腹筋壊れるぅ」

「うっわ! たすくが放心してる! 琴実、携帯出せ!
この顔撮ってたすくをユスるぞ!!」

 ユスル?

「キョン……そんなに俺のこと、嫌いなの……?」

 腕をいきなり捕まれ、戸部たすくを見れば、その大きな瞳を小刻みに揺らして私をじっと見つめてくる。
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